「いつかは自分の農園を持ちたい」「自然とともに働きながら、自分だけの作品を育ててみたい」と思ったことはありませんか?そんな夢を実現できる仕事のひとつが「ぶどう農家」です。
豊かな自然の中でのびのびとしながら人間関係などのしがらみなどもなく、ただただ目の前のぶどう達の成長に寄り添って自分らしく作業をできるのも大きな魅力です。
また、年々、栽培技術が普及し省力化の技術も向上しているため、以前と比べれば未経験からでも取り組みやすくなっています。
この記事では、「ぶどう農家になるにはどうしたらよいのか」「繁忙期の仕事内容」「冬に行う作業」「気になる収入面」について詳しく解説します。ぶどう農家の世界へ足を踏み出すためのポイントをぜひ参考にしてください。
1. ぶどう農家になるには?
農業技術と知識の習得
ぶどう農家を目指すなら、まずは栽培の基礎知識を学ぶことが大切です。農業大学や専門学校で栽培の基礎を学び、農家でのインターンシップや研修に参加するのが一般的です。
近年の農業人口の減少に伴い、新規就農者向けの研修や支援も行政機関を中心に行っており、未経験者でも挑戦しやすい環境は整っています。
また、インターネットやYouTubeでも農業関係の情報を発信している方もたくさんいるため、事前学習、知識の習得、日々の悩みなどの解決にも取り組みやすいのが現代の特徴とも言えるでしょう。
土地の確保と栽培環境の準備
ぶどう栽培には、日当たりが良く、水はけの良い土地が理想的です。
しかし、桃栗三年柿八年という言葉があるように、ぶどうも苗木を植えてからある程度の収穫量を確保できるようになるまでには早くても3年、平均的に5年は未収益期間があることを考慮して準備を進める必要があります。
そのような期間に対して最も効果のある対策としては、後継者問題を抱えている農家さんとマッチングすること。
実際の就農経験を積みながら未収益期間のカバーもできるため、行政の担当者や地元の繋がりなどから良いご縁が繋がるように行動しましょう。
また、行政機関では、新規就農者の農地取得や賃貸借契約をサポートする体制が整っているため、まずは農政課などの行政機関窓口に相談してみることをお勧めします。
資金調達と経営計画
ぶどう農家を始めるためにはどうしてもぶどう棚を作る必要があり、そのコストも数百万円単位となるため、なかなか参入障壁が高いことも事実。
前述のような後継者問題を抱えている農家さんとの出会いや、ぶどう棚はあるが耕作放棄地になっているような土地がないのか、などの情報をできる限り多く入手するようにしましょう。
ただ、資金調達に関しては認定新規就農者になれば、青年等就農資金など行政機関や日本政策金融公庫を中心にかなり手厚い支援を受けることができるため、資金調達という大きなハードルを超えるためにまずは認定新規就農者となるための手続きを進めておきましょう。
また、行政機関に限らずJAも農家をサポートする補助事業などを行っているため、一度、地元のJAに相談してみるのもオススメです。
2.ぶどう農家の繁忙時期
夏から秋にかけての収穫・出荷期がピーク
ぶどうの収穫は品種や栽培地により異なりますが、一般的には店頭にぶどうが並ぶ8月から10月が繁忙期です。 この時期には熟したぶどうを一房ずつ収穫し、選別、箱詰め、出荷作業を手際よく進めます特に、収穫のタイミングがずれると鮮度が落ちるため、短時間で効率的に収穫することが求められます。
しかし、実はぶどう農家にとっては、花穂整形、ジベレリン作業、房作り、摘粒などのぶどう作りにおける超重要作業が集中する6月が最も精神的に気が抜けない時期です。
この時期は天気予報を1日に何度も見ながら数日先の作業を組み立てていき、抜かりなく作業を進めているのです。
そして7月中旬以降になりぶどうに袋がけが済めば、それまでの緊張状態からやっと解放され、収穫の時まで副梢管理を中心とした圃場の管理作業が中心となります。
春〜夏の準備作業
春から初夏にかけては、芽かきや葉の管理を中心に作業します。また、ぶどうの木が健康に育つように防除作業も欠かせません。
去年の枝の成長度合いから、今年はどのように圃場全体を作っていくのか、どの品種はどれくらい収量がありそうかなどをイメージしながら作業をしていきます。
3. ぶどう農家の冬の仕事
冬の剪定作業
ぶどう農家にとって夏の慌ただしさに反して、冬は圃場とじっくりと時間をかけながら向き合い大切な剪定作業を行います。
剪定作業は、雪のない地域は1回で済ませることが多いですが、降雪地域では雪の重さで枝が折れたり樹やぶどう棚が倒れることのないように12月頃に荒剪定を行い、積雪や気温の変化を見ながら2月から3月頃にかけて本剪定を行います。
剪定作業にあたっては、短梢栽培では省力化が図られていますが、従来ながらの自然形・長梢栽培では経験と技術が求められます。
土壌管理と設備
冬の間に土壌改良や肥料の補充を行うことで、来シーズンに備えます。
ぶどうの栄養分として窒素は非常に重要ですが、気温が上がる春などに施肥をしてしまうと窒素が効き過ぎて、枝が過剰に伸びて充実した房を実らせることができません。
そのため、その年の収穫が終わった10月から11月頃にかけて来年に向けての施肥を行い、じっくりと時間をかけて土に栄養が行き届くようにします。
また、灌漑設備や農機具のメンテナンスを行い、春からの成長期に万全の準備で準備も欠かせません。ハウスの修繕や必要な道具の点検などもこの時期に行い、次の繁忙期に備えます。
4. ぶどう農家の収入事情
収穫量は品種、栽培方法、販売戦略で大きく異なる
ぶどう農家の収入は、選ぶ品種や販売方法によって大きく異なります。
特に高級品種やオーガニック栽培のぶどうは市場で高値がつきやすく、観光農園や直売所、オンラインショップの利用で中間経費などを抑えて販売することができれば、さらに利益率を高めることができます。
現代では、農産物などをオンライン販売するプラットフォームも整っていますから、販路を拡大するためにも有効活用しない手はありません。
年間収入の目安と手取り
一般的なぶどう農家の年間売上は、規模によって異なりますが300万円〜1,000万円程度が多いとされています。
設備投資や人件費などがあるため、売上の50〜70%が実質的な手取りです。
色々な農産物の価格が下がる中、ぶどうだけは唯一と言ってもいいほど価格を維持しているため、高付加価値な品種を栽培して年収1,000万円以上を目指すことも十分可能です。
5. まとめ:ぶどう農家で充実した人生を
ぶどう農家は、収穫や出荷の繁忙期を乗り越えながら充実した収益を得ることができる魅力的な職業。
就農支援制度や補助金制度を利用すれば、新規就農者も挑戦しやすい環境が整っており、収益を安定させるには計画的な経営と付加価値の高い商品展開が鍵です。
観光農園としての体験型収益や、オンライン販売での付加価値商品も検討し、他との差別化を図ったぶどう農家を目指し、計画的かつ戦略的な経営で一歩を踏み出してみてください。