※この記事は、農家・生産者向けの「ネット販売・EC化」に関する内容です。
農家にとってネット販売は、「売る場所をひとつ増やす」というレベルではありません。
- 市場価格の乱高下
- 手数料・資材高騰
- 直売所の競争激化
- 気候リスクの増大
- 労働力不足
- 農産物価格の不安定
こうした外部要因に左右されないための“収益の柱”を作るのがネット直販です。
そして、この“柱”を作るために必須なのが、自分のECサイト(=自社オンライン直売所) です。
この記事では、
- 農家はどのECを選ぶべきか
- STORESとBASEの違い
- なぜ農家には「STORES推し」なのか
- “売れるEC”を作るための実務手順
- モール(食べチョク等)とどう使い分けるか
を私自身の経験を踏まえて、農家の現場目線で徹底的に解説します。
読み終える頃には、あなたの農園に最適化されたEC構築の全体像が完全に理解できるようになります。
1|農家がECサイトを持つべき理由
農家がECサイトを持つ理由は、単に「ネット販売できるから」ではありません。
もっと本質的なメリットがあります。
理由①:顧客情報を“自分で所有できる”
食べチョク・産直アウルなどのモールでは、
- お客様のメールアドレス
- 住所
- 購入履歴
- 好み
などの“顧客資産”はモール側のものです。
購入履歴などからこれらの情報を辿ることはできるものの、基本的にあなたは「発送を代行する人」に近い立場です。
しかし自社ECは違います。
- あなた自身の顧客
- 何を買ったかすべて把握
- いつ・何回・どの種類を購入したかも分かる
つまり、翌年の予約販売 → リピート → 顧客育成がすべて自分でできる。
この差は経営レベルの差になります。
理由②:価格とブランドを自分で作れる
大手ECサイトでは、価格勝負になりがちです。
- 同じ作物
- 同じ品種
- 同じ地域
比較されるのは「値段」、「レビュー」、「写真の明るさ」です。
しかし自社ECでは、
- あなたの世界観
- 畑のストーリー
- 品質のこだわり
- お客様との関係性
すべてを表現できます。
何より本質的な価格決定権はあなたが持つ。
これは農家にとって最大のメリットです。
理由③:毎年の予約販売が安定する
農家のネット販売は、「単発」ではなく「積み上げ型」です。
自社ECでファンを育てると、翌年はたくさんの予約注文を受けるようになります。
市場価格が暴れても、出来が悪い年でも、収穫量が少ない年でも、予約で売上がほぼ確定する農家が増えています。
2|“モール”と“自社EC”の違い
ECを始める農家の多くが、この違いを理解しないままスタートします。
しかし、ここを理解すれば「選ぶべきEC」が一瞬で分かります。
大手ECサイト・モール系(食べチョク / アウル / ポケマル)
メリット
- 初速が出る
- すぐ売れる
- レビューが貯まる
- 無名でも購入される
デメリット
- 手数料が高い
- 顧客情報が手に入らない
- ブランドが育ちにくい
- 価格比較されやすい
本質的役割
「新規客の入口」
自社ECサイト(BASE / STORES)
メリット
- 顧客情報を持てる
- ブランドを構築できる
- 口コミが“あなたの資産”になる
- 価格競争からの解放
- 予約販売が毎年積み上がる
デメリット
- 最初はアクセスが少ない
- 写真や文章が必要
- 自分で“育てていく”必要がある
本質的役割
「ファン育成・予約販売・リピート」
結論:
モールは「新規」
自社ECは「ファン」
どちらが優れるという対比ではなく、この両輪が揃うと農家は強くなります。
3|BASE / STORES の比較(農家目線)
ここからは農家目線に特化して、BASEとSTORESを徹底比較します。
結論から言うと、総合点ではSTORESが農家と最も相性が良いです。
ちなみに私も自社ECサイトを構築する際、色々と検討しましたがSTORES一択でした。
理由を分かりやすく示します。
比較①:操作のしやすさ
- BASE:簡単だが画面がやや古い
- STORES:直感的で迷わないUI
👉 勝者:STORES
比較②:デザイン
- BASE:シンプルで万人向け
- STORES:写真が大きく見えるテンプレ多数
→ フルーツ・野菜のECと相性抜群
👉 勝者:STORES
比較③:送料設定(農家に最重要)
農産物はサイズ・地域別で送料が変わります。
- BASE:設定はできるが柔軟性は中くらい
- STORES:柔軟性が高く、農産物の現実に合っている
👉 勝者:STORES
比較④:発送オペレーション
- BASE:標準的
- STORES:スマホで完結しやすい
👉 勝者:STORES
比較⑤:決済方法
どちらも充実。差は小さい。
比較⑥:予約販売(農家の生命線)
- BASE:アプリ追加すれば可能
- STORES:標準で運用しやすい
👉 僅差でSTORES
結論:農家 × STORES」が最強である理由
理由は1つではありません。
次の複合効果です。
写真を大きく見せられる
農産物販売では写真が“売上の7割”とも言われています。
管理が簡単でシンプル
収穫期は忙しいので「迷わないUI」がかなり重要。
送料設定が柔軟
農家の発送現場に最も寄り添っている。
予約販売との相性が抜群
農家経営を安定させる核。
商品ページが見やすく、買いやすい
スマホでの見やすさが圧倒的。
BASEもとても良いサービスですが、農家の現場目線で最適なのはSTORES(特に果樹・野菜・加工品)というのが結論です。
4|ECサイト構築ステップ(実務編)
ここからは “実務としてどのようにECサイトを作ればいいか” を、農家向けに完全ステップ化します。
STEP1:看板商品を決める
複数出すのはNG。
- ナガノパープル
- クイーンルージュ
- シャインマスカット
- 旬野菜セット
- 加工品詰め合わせ
最も売りたい商品を1つに絞る。
これがEC全体の設計軸になります。
STEP2:必要な写真を揃える
農産物ECは「写真が命」。
最低限必要な写真:
- 商品の全体
- 粒・果肉・断面
- 箱入り・梱包
- 畑・作業風景
- 農家本人・家族
- 収穫シーン
- 食べ頃の状態
- 実際にお皿に盛った状態
写真が弱い=売れない、と同義です。
STEP3:STORESでショップ開設
必要なのはこれだけ:
- メールアドレス
- 店舗名
- 店舗の説明文
- 簡単なロゴ(文字でもOK)
10分で立ち上げることができます。
STEP4:商品ページの作り込み
後述する「黄金ルール」を採用します。
STEP5:送料・発送設定
- 地域別
- サイズ別
- クール便
- 収穫後の発送スケジュール
果樹農家は特に丁寧に設定するとクレームが減ります。
STEP6:支払い方法の設定
- クレカ
- コンビニ
- キャリア決済
多いほど購入率UP。
STEP7:テスト注文
家族に実際に買ってもらうとミス・漏れを削減できますので、シーズン前の最終チェックとして使いましょう。
5|商品ページの作り方(黄金ルール)
商品ページには「買う理由」と「安心して買える理由」 の両方が必要。
以下の構成が鉄板です。
① 写真(最重要)
最初の3秒で買うか決まる。
② キャッチコピー
例)
「標高900mで育つ、濃厚なナガノパープル」
「農薬管理を徹底した、安心のぶどう」
③ 商品説明(味・特徴)
- 甘さ
- 香り
- 食感
- 皮の状態
- 種の有無
④ ストーリー(畑・農園・農家の想い)
最も売上に影響する部分。
商品ページ単体ではなく、サイト全体で構成してもOK。
⑤ 栽培へのこだわり
- 農薬散布の方針
- 水管理
- 収穫タイミング
- 温度管理
⑥ 届いたときの状態
- 箱
- 梱包
- 冷蔵の有無
⑦ 賞味期限・保存方法
お客様に安心・安全な農産物をお届けするためにも、しっかりと明記しましょう。
⑧ 注意事項(季節・個体差)
農産物は工業製品などとは違い「完全な規格」を再現できるものではないため、お客様にしっかりと理解していただくようにしましょう。
⑨ 購入ボタン
商品ページの「どこから購入できるのか」が明確になっているようにしましょう。
購入ボタンが分かりづらかったり、購入手続きが複雑であった場合、購入自体をやめてページから離脱してしまうリスクがあるため、分かりやすいデザインを心がけましょう。
6|写真撮影の鉄則
お客様の購入を後押しするために「品質の良い写真」は絶対に必要です。
しかし、最新のスマホのカメラ機能は高性能なモデルも多いため、高額のカメラを用意する必要はありません。
鉄則①:自然光(朝〜午前中)
午後は色が沈む。
鉄則②:真上ではなく45度から撮る
お客様が農作物をイメージしやすいように立体感が出るように撮影しましょう。
鉄則③:粒の“ハリ”を見せる
よく水滴を付ける写真を見かけますが、農作物の種類などによってはかえって不自然になってしまうことがあるため注意しましょう。
鉄則④:箱入り写真は「届いた瞬間」を意識
apple社のiphoneは、ユーザーが届いた商品を開封する瞬間を「重要な体験」として位置付けています。
その感動がファン化に繋がると考えている意図がよく分かるわけですが、農産物も同じように感動を届けられるように意識しましょう。
鉄則⑤:農家本人の写真は絶対入れる
ECサイトに生産者の写真を入れることで「顔が見える距離感」になるため、大きな信頼を獲得することができます。
そして、清潔感ある印象を与えることも重要です。(ボサボサの髪、伸ばしっぱなしの髭面はNG)
7|送料・発送・納期設定の最適解
農産物ECのクレームの8割は
- 納期
- 送料
- 梱包
と言われています。
せっかく良い農作物を提供できたにも関わらず、サービス面で苦情をもらっては本末転倒のため、抜かりなく準備しましょう。
地域別送料は最大5区分まで
設定が細か過ぎるとそれだけで離脱してしまいますし、大量注文のチャンスを逃してしまいます。
当園の場合は「分かりやすさ」を最優先とし、本州とそれ以外の2つに設定しています。
納期は「収穫後3〜5日以内」と明確に
お客様は、「何日で到着するのか」ではなく「とにかく鮮度が良い状態で届いて欲しい」という想いが強いため、その期待に応えるためにも「分かりやすい説明」を明記しましょう。
食べ頃の説明は必須
お客様は農産物の知識がほぼゼロという前提に立ち、最大限の美味しさを提供できるように案内文を添付するようにしましょう。
8|SNS・LINEとの連携で“売れる導線”を作る
自社ECは“店”であり、SNS・LINEはそれに通じる“道路”と考えてください。
道路がないとお客は来ませんし、お店がないと道路があっても通り過ぎていってしまいます。
情報発信をする上で、「何のために」「どういう設計」をしっかりと意識することが重要になってきます。
① Instagram
写真で世界観を共有し、公式サイト、公式LINEへ流す
- プロフィールにリンク
- 「収穫まで〇日」
- 「予約スタートのお知らせ」
② LINE(ファン化の中心)
- 予約販売
- 再販通知
- 収穫連絡
- 限定販売
これによってLINE→STORESへの流れが整います。
9|よくある失敗と成功農家の共通点
よくある失敗
- 商品が多過ぎる
- 写真が暗い
- 文章が薄い
- 送料が複雑
- SNSの導線がない
- 予約販売をしていない
成功農家の共通点
- 公式サイト、公式LINE、Instagram、STORESで“世界観”を統一している
- 商品数は少なめ
- 商品写真に力を入れている
- 予約販売を行う
- SNSで日常と畑を発信
- 顧客情報を資産として扱う
10|明日からできる行動チェックリスト
今日
□ 看板商品を決める
□ STORESのアカウントを作る
□ 必要写真をリスト化
3日以内
□ 商品ページのドラフトを作る
□ 送料設定
□ 発送オペレーション確認
1週間以内
□ SNSとSTORESを接続
□ 公式LINEを整える
□ テスト購入で動作確認
1ヶ月以内
□ 写真撮り直し
□ 商品ページの改善
□ 予約販売の設計
まとめ:農家ECの最適解は「STORES」
BASEは優秀なサービスですが、農家の実務・現場・発送オペレーション・写真メインの世界観これらを総合すると、農家 × STORESが現時点での私の最適解です。
- 写真が映える
- 送料が柔軟
- 操作が直感的
- 予約販売しやすい
- スマホ完結できる
つまり「農家が一番ラクに、一番売れる店」 を作れるのはSTORES。
そして、ECサイト最大の魅力は、24時間いつでも集客・販売ができるということ。
これが実店舗となるとそうはいきませんし、何より設備投資にも相当な費用がかかると同時に多くのリスクを抱えることになります。
それに対し、ネットショップであれば数千円〜多くても3万円ほどでサイト構築・出店できることが大きなメリットです。
大変そうだから、難しそうだから自分にはできない。と思って、着手しない人の方が圧倒的に多いのが現実です。
まずはやってみる、という気持ちでトライしてみましょう。
